バルフレアはよく銃の手入れをしている。
 銃本体を分解してから、それぞれのパーツに不具合がないかをチェックし、オイルや煤などの汚れを丁寧に拭きとり、そしてまた組み立て直す。
 少しでも時間ができると、何丁かある愛銃のどれかを選んで手入れをはじめる。あるいは改良を加えてみたり、部品の交換をしてみたり。
 そうしているときのバルフレアはいつだってご機嫌だ。
 ふだんの澄まし顔はどこへやら、オモチャを与えられた子どものようになる。
 目は真剣そのもので、でもなんか嬉しそうで、口元は笑っていて、いまにも歌いだしそうな、やわらかい表情。
 傍から見ているだけでも、すごく好きだってことが伝わってくる。
 ほんとうに楽しくてたまらないって感じで、とてもとても大好きなんだってことが判るんだ。

 繰りかえされる甘いキス。
 心地よい重みと素肌に広がる温もり。
 器用な指先がベルトの留め金を外す涼しげな音。
 小さくこぼれた吐息を確かめるように覗きこむヘーゼルグリーンの瞳。
 ゆるゆると蕩けていく意識の中で、ヴァンはぼんやりそんなことを思い出していた。
 …どうしてだろう?と考え、見つけた答えに頬が熱くなる。

 バルフレアが銃の手入れをしているときと同じ表情をしていたからだ。


おわり(2007.04.18)


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